酸素療法に関連した情報をお届けいたします。
- リザーバマスク
- 吸入酸素濃度
- 酸素流量
- 加湿
リザーバマスクを正しく使うために~必要な酸素流量や使用上の注意点~
高濃度酸素吸入に使用されるリザーバ付酸素マスク(以下、リザーバマスク)。特性を理解したうえで正しく使用しないと、想定した吸入酸素濃度を得られないことがあるため、注意が必要です。ここでは、リザーバマスクの特性と適切に使うための注意点について解説します。
「10分でわかる!酸素療法デバイスの基礎知識」(無料ダウンロード)では、リザーバマスクの他にも、各種デバイスの特徴や注意点をやさしく解説しています。酸素投与を適切に行うために是非あわせてご覧ください。
医学的監修
公立陶生病院
呼吸器・アレルギー疾患内科/救急部集中治療室
横山俊樹 先生
リザーバマスクの特性とは
リザーバマスクは、マスク側面とリザーバ接合部にある一方弁の働きによって、呼気時と吸気時で酸素の流れが切り替わります。
呼気時にはマスク側面の弁が開いて呼気が外部に放出され、接合部の弁が閉じてリザーバに酸素が溜まります。接合部の弁があることで、呼気がリザーバに逆流することはありません。
一方、吸気時にはマスク側面の弁が閉じて外気の流入を防ぎ、接合部の弁が開いてリザーバ内の酸素がマスク内に吸い込まれます。リザーバ内に溜まった酸素とチューブから流れる酸素を合わせて吸入するので、高濃度の酸素を吸入することができます。
リザーバマスクの仕組み
リザーバマスクには、マスク側・バッグ側それぞれに一方弁があり、呼気と酸素の流れをコントロールしています。
▼マスク側一方弁開いて呼気を外部に放出
▼バッグ側一方弁閉じて流れてきた酸素を
バッグに溜める
▼マスク側一方弁閉じて外気の流入を防ぐ
▼バッグ側一方弁開いてバッグ内の酸素を
マスク内に放出
加湿は必要? 酸素流量は? リザーバマスク使用上の注意点
リザーバマスクは、鼻カニュラや簡易酸素マスクよりも高濃度の酸素吸入を目的として使用されます。
リザーバマスクの吸入酸素濃度の目安
酸素流量(L/min) | 吸入酸素濃度の推定値(%) |
---|---|
6 | 60 |
7 | 70 |
8 | 80 |
9 | 90 |
10 | 90~ |
(文献1より引用)
リザーバマスクは、呼気の再呼吸を防ぎ、なおかつリザーバ内に十分な酸素を溜めるために、酸素流量は6L/min以上で使用します。吸気量に対してリザーバの酸素貯留量が不足すると、途中で吸気ができなくなるので、1回換気量が多い患者さんの場合は注意が必要です。リザーバマスクを使用する際はリザーバが膨らんでいることを必ず確認し、リザーバが空にならないよう、酸素流量を調節します。
また、1回換気量の多くが配管からの乾燥した酸素を吸入することになるため、加湿が必要です。それでも上気道の乾燥が避けられないため、長期間の使用には適していません。リザーバマスクは緊急に高濃度の酸素投与が必要な場合に使用されます。
リザーバマスクを使用する際は、高濃度酸素の吸入によるCO2ナルコーシスや酸素中毒の兆候がないか、患者さんの状態を常に観察することが大切です。(高濃度酸素投与で起こりうる合併症については「酸素療法で注意すべきCO2ナルコーシス」「酸素濃度は高ければいい!?気をつけたい酸素中毒」を参照してください)
リザーバマスクで吸入酸素濃度が高くなるとは限らない!?
リザーバマスクを使用すれば、高い吸入酸素濃度が得られると思い込んではいないでしょうか。しかし、マスクが顔にフィットしていないと、マスクと顔の隙間から空気が流入し、リザーバ内の酸素がきちんと吸えなくなるため、想定した吸入酸素濃度に達しないことがあります。
マスクを着ける際は隙間ができないように患者さんの顔に密着させ、吸気時にリザーバがしぼむことを確認することが大切です。
マスクのフィッティングが悪いと…
最後に
リザーバーマスクはあくまでも一時的に高濃度酸素を投与し、SpO2を少しでも維持する手段(デバイス)です。
長時間の使用は極力避けるようにして、適切な呼吸管理に移行するようにしましょう。
まとめ
- リザーバマスクは、呼気時にリザーバに酸素を溜め、次の吸気時に溜まった酸素を吸い込むため、高濃度の酸素吸入ができる。
- 酸素流量は6L/min以上で使用し、リザーバが空にならないよう酸素流量を調節する。
- 吸入気の大部分を配管からの乾燥した酸素を吸入することになるため、必ず加湿する。
- リザーバマスク使用時は、高濃度酸素の吸入によるCO2ナルコーシスや酸素中毒の兆候がないか、患者さんの状態を常に観察する。
- マスクのフィッティングが悪いと想定した吸入酸素濃度に達しないことがあるため、注意が必要。
【参考文献】
- 日本呼吸ケア・リハビリテーション学会, 日本呼吸器学会編, 酸素療法マニュアル, メディカルレビュー社, 2017