酸素療法に関連した情報をお届けいたします。
- 酸素療法
- 看護
- 適応
- 低流量システム
- 高流量システム
- 注意点
知っておきたい酸素療法の基礎知識〜開始基準や酸素投与の方法について〜
酸素療法は、酸素不足によって起こる身体機能の低下を改善するために行われます。酸素療法を実施する際には、患者さんの状態に応じて、適応や投与方法などを適切に判断することが求められます。
「10分でわかる!酸素療法デバイスの基礎知識」(無料ダウンロード)では、酸素療法デバイスの特徴や注意点をやさしく解説しています。酸素投与を適切に行うために是非あわせてご覧ください。
医学的監修
公立陶生病院
呼吸器・アレルギー疾患内科/救急部集中治療室
横山俊樹 先生
酸素療法の目的は?
低酸素症の患者さんに、室内の空気(酸素濃度21%)より高い濃度の酸素を吸入させることで、低下した動脈血酸素分圧(PaO2)を上昇させ、低酸素状態に陥った組織へ酸素を供給します。また、低酸素血症により引き起こされた換気亢進や心拍数増加を抑制し、肺や心臓への負担を軽減します。
酸素療法の適応と開始基準は?
酸素療法は、次のような場合に適応になります。
- 動脈血酸素分圧(PaO2)<60mmHg あるいは 経皮的動脈血酸素飽和度(SpO2)<90%
- 患者さんの判断力の低下、混迷、意識消失、不整脈、頻脈あるいは徐脈、血管拡張、血圧低下、中心性チアノーゼなどの身体所見を認めるとき
- 短期治療また外科的手術の場合(麻酔回復期後など)
酸素療法の開始や、酸素流量、投与方法などを決定する際には、PaO2またはSpO2が判断基準となります。また、酸素療法中は、細胞レベルでの適切な酸素化を維持するためにSpO2を監視するとともに、ヘモグロビン濃度、心拍出量、組織血流量にも注意を払う必要があります。
酸素療法の注意点は?
酸素療法が必要となる低酸素血症では、呼吸困難、不整脈、言語障害、意識障害を認めることがあるため、次のように患者さんの状態を注意深く観察します。
- 呼吸状態や循環状態、意識状態を含めた臨床評価
- 血液ガス検査またはSpO2の評価
- 酸素中毒の徴候
また、酸素流量5L/min以下でのマスクの使用による呼気ガス再呼吸や、過剰な酸素投与で引き起こされるCO2ナルコーシス、脳や肺の酸素中毒、無気肺などの副作用にも注意が必要です。(CO2ナルコーシスについては「酸素療法で注意すべきCO2ナルコーシス」を参照してください)
酸素療法デバイスは大きくわけて2種類
酸素療法デバイスは、患者さんの1回換気量を上回る量の吸入気を供給するかどうかで、「低流量システム」と「高流量システム」に分類されます。
低流量システム
患者さんの1回換気量以下の流量で100%酸素を供給します。不足分は空気を吸入することで補います。1回換気量が不安定な呼吸では、吸入酸素濃度が安定しません。
1回換気量 > 酸素流量
対象
- 比較的規則正しい呼吸パターンの患者
- 厳密な吸入酸素濃度の管理が不要な患者
主なデバイス
- 鼻カニュラ
- 簡易酸素マスク
- 開放型酸素マスク(オープンフェースマスク)
- リザーバ付酸素マスク※
- リザーバ付鼻カニュラ※など
※リザーバシステムに分類される場合もあります。
(それぞれの特徴や吸入酸素濃度の目安については、「酸素マスクなどデバイスの種類と特徴」を参照してください)
高流量システム
酸素と空気を混合して、患者さんの1回換気量以上の流量で供給します。供給量が換気量を常に上回るため、呼吸の状態に左右されずに一定濃度で酸素を吸入できます。
1回換気量 < トータル流量(酸素+空気の混合気)
対象
- 1回換気量や呼吸パターンが不安定な患者
- 正確な吸入酸素濃度の管理が必要な患者
- 持続的な加湿や薬剤吸入が必要な患者
主なデバイス
- ベンチュリマスク
- ネブライザー式酸素吸入器 など
まとめ
- 酸素療法とは、室内の空気(酸素濃度21%)より高い濃度の酸素を吸入させる治療法。
- 酸素療法の目的は、低下したPaO2を上昇させ、酸素不足になった組織に酸素を供給すること。
- 酸素療法の開始基準は、PaO2<60mmHg あるいは SpO2<90%
- 酸素投与時は、SpO2や意識レベルの変化、呼吸パターンや呼吸回数、呼吸困難感の有無などを注意深く観察する。
- 低流量システムは、患者さんの1回換気量以下の流量で100%の酸素を供給する。(不足分は空気を吸入することで補う)
- 高流量システムは、酸素と空気を混合して、患者さんの1回換気量以上の流量で供給する。
【参考文献】
- 日本呼吸ケア・リハビリテーション学会, 日本呼吸器学会編, 酸素療法マニュアル, メディカルレビュー社, 2017
- 小児のための酸素療法実践ガイド 第2版, アトムメディカル, 2021